保育園「待機児童」の定義見直し(2017年/平成29年)

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この記事では、2017年3月31日に厚生労働省から各自治体に通知された、「新しい待機児童の定義」について、厚生労働省の資料をもとに解説しています。育休・求職中の人に配慮した定義に変更されるようです。

保育園の入りづらさ・激戦度合いを知りたい場合、自分の住む自治体の待機児童数をチェックする人は多いと思います。でも、自治体によっては保育園になかなか入れないのに「待機児童ゼロ人」を公表していたりします。(例:横浜市、川崎市)

これには、「待機児童数」という数字の定義をちゃんと理解する必要があります。

待機児童の定義というのは厚生労働省が作っています。保育園に入れなかった子ども(入れられなかった親)のうち、特定の条件に該当する人を待機児童から除外した残りの数を待機児童とカウントするのだけど、該当基準が結構自治体によって幅広い解釈をできるような定義になっているのです。

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これまで(2017年3月まで)の待機児童の定義

待機児童数を減らすべく、保育園を新設したりするのは地方自治体です。ただ、全体の待機児童数を把握するのは国である厚生労働省が行っています。そのため、厚生労働省が各地方自治体向けに、「保育所等利用待機児童数調査要領」という指示をだして、毎年4月と10月に待機児童数を調査するよう指示しています。

ここで定められている待機児童の定義によると、以下は待機児童に含めなくて良い、ということが書いています。

  1. 求職中の保護者が、調査日(4/1)時点で求職活動を停止している
  2. 育児休業中である
  3. 認可外など、他の保育施設を利用している
  4. 他に利用可能な保育園があるのに、特定の保育所等を希望し、保護者の私的な理由により待機している

※番号は私が説明用につけてます。また、かなり端折って書いています。

1,2は、「保育園には入れなかったので止むを得ず求職停止、育休延長した」という人を除外するもので、個人的にいちばん理不尽だと感じています。

3は例えば認可外から認可保育園に転園を希望しているけれど、落選したような人で、これを数えないのはまだ理解できます。

4は解釈がいちばん難しくて、園の方針に共感しているからここしか行きたくない」というような自己都合のものから、「入園できたけど片道30分かかるから行きたくない」とか「きょうだい別の園になったから困る」とか自己都合というにはあまりに酷なものも含まれるようです。

自治体にもよるけれど、待機児童に数えてもらえない人は、4番がいちばん多い印象です。2017年の横浜市の場合だと、待機児童に数えてもらえない3,200人程度のうち、1と2で20%、3が30%、4が50%くらいの割合です。

これまでの定義については、過去にまとめているので、参考にしてください。

保育園「待機児童」の正確な定義とは?厚生労働省の定義を読み解く
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これから(2017年4月から)の待機児童の定義

さきにあげた「保育園に入れなかったけれど、待機児童にカウントされない」児童の数は、「隠れ待機児童」として話題になっていました。

また、自治体に集計を任せた結果、自治体ごとに解釈がバラバラになっていることを厚生労働省としては、問題に考えたようで、定義を見直すべく、2016年9月から半年かけて検討会を開催しました。

その結果、新しい定義が次のように定められました。変更のあった箇所を中心に引用します。

1. 保護者が求職活動中の場合については、待機児童数に含めること。ただし、求職活動中であることを事由とした申込みについては、調査日時点において求職活動を行っておらず、保育の必要性が認められない状況にあることの確認ができる場合には、待機児童数には含めないこと。

※ 求職活動を休止していることの確認方法については、以下のような例により行うこと。

(1) 保護者への電話・メール等により、求職活動の状況を聴取
(2) 保護者に以下の書類の提出を求めるなど、求職活動状況の報告により確認
・求職活動状況を確認できる証明書類
・求職サイトや派遣会社への登録などの活動を証明できる書類
・その他、面接等の活動を行っていることが確認できる書類(申込書の写し等)

7. (中略)市区町村は保育所に関する情報提供を行う(中略)

※ 他に利用可能な保育所等の情報提供については、個別に保護者へ行うことを基本とし、以下のような例により行うこと。

(1) 一次選考後、保留通知を送付する際に、併せて利用可能な保育所等の情報を送付
(2) 他に利用可能な保育所等を保護者への電話・メール等により個別に情報提供
(3) 自治体の相談窓口等で個別に情報提供

8. 育児休業中の保護者については、保育所等に入所できたときに復職することを、保育所入所保留通知書発出後や調査日時点などにおいて継続的に確認し、復職に関する確認ができる場合には、待機児童数に含めること。ただし、それが確認できない場合には、待機児童数に含めないこと。市区町村は育児休業を延長した者及び育児休業を切り上げて復職したい者等のニーズを適切に把握し、引き続き利用調整を行うこと。

※ 保護者の復職に関する確認方法については、以下のような例により、利用申込み時点に限らず、継続的に確認を行うこと。

(1) 申込みの際に、保護者の復職に関して、確認するためのチェック欄等を設けて確認
(2) 保護者への電話・メール等により、意向を聴取
(3) 保護者に入所に関する確約書の提出を求めて確認

出典 保育所等利用待機児童数調査について(平成29年3月31日 雇児保発0331第6号厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知)

※原本を見つけられなかったので、神奈川県の報道発表資料に添付されていた文面より引用しています。

新しい待機児童の定義(2017年3月31日)のポイント

新しい待機児童は、大きく分けると以下の3つが変わりました。

  1. 求職中の人に関する待機児童の定義拡大(上記引用の項番1)
  2. 育休延長の人に関する待機児童の定義拡大(上記引用の項番8)
  3. 特定の保育所を希望する人の定義拡大(上記引用の項番6)

1と2については大きな前進です。保育園に入れなかったので、育休を延長する羽目になった人に連絡をとって、「ひとまず4月1日時点では育児に専念するけれど、保育園がみつかり次第、育休終了・就職活動再開します」という意思表明をした保護者を、しっかり待機児童の対象とみなすことを明記したのです。

若干釈然としないのが3番です。これまでとの違いは、「よりきめ細かい情報を提供しますよ」という3つの手法が追記されただけなのです。若干定義とは違う気がします。

「残念ながら希望の園は全て落ちました。でも、このエリアなら空きがありますよ?二次先行に応募してはいかがですか?」といったフォローをすることで、どこにも入る保育園がなかった、という不幸な人を減らす(待機児童を減らす)という意思表明に見えます。

といっても、このカテゴリに当てはまる人は、これまでの定義では待機児童から除外されていたので、この変更によって、待機児童の数は変化しないように思います。ただ、「希望した保育園に入れなかった」という隠れ待機児童と言われていた人を「当初の希望とは違ったけれど、妥協できる保育園に入れた」という状態に改善できるのかな、と思っています。

考察:新しい待機児童の定義の問題点

ここからは私の考察です。今回の定義の変更によって、待機児童数はより実態を反映して、多めの数字になるはずです。ただ、自治体ごとに精度のバラツキが大きい、というこれまでと似た問題が引き続き発生すると予想します。

その理由は、待機児童数を正確に把握するための自治体の負担が増え、正確に把握できない(しない)自治体も出てくるのではないか、と考えるからです。

新しい待機児童数の定義は、保護者のための「寄り添う支援」が売り文句のようです。これまで保護者の意向や状況を十分に把握しないまま、保育園の利用調整・待機児童調査を行ってしまっていたことを反省し、自治体がよりきめ細やかなフォローアップをすることになるようです。

保護者としてはありがたい反面、自治体としては大幅な連絡・確認作業の増加を意味することになりそうです。申込書に「保育園決まらなかったら育休・就活延長して継続して保育園を申し込むのか?」といった質問を追加したり、通知後に連絡をして「保活継続ですか?」といった質問をしなければならなくなります。

また、落選した親たちにたいして、「あなたの住所だと、ここの保育園がギリギリ通える距離で、空きがある」といった個別の利用調整も行わないといけません。

待機児童問題に困っている全ての自治体がこれを全てやるマンパワーはあるのでしょうか?また、利用調整というのは保育園に空きがあることが前提です。本当の激戦区では、どの保育園も空きがないので、そもそもこのプロセスは機能しないのでは、と思ってしまいます。

人手が豊富な自治体は、きめ細やかな利用調整・実態把握ができるでしょうが、人手不足の自治体では、そこまで正確に育休・求職中の人の数を把握したり、利用調整に時間をかけたりできないのではないかと思います。

また、今回の定義変更は3月31日に告知されました。自治体は翌日4月1日分の待機児童を集計しなければいけません。1日で新しい定義に従った集計をするのはかなり大変だと想像されます。そのため、新定義を骨抜きにする救済措置があるようです。

自治体の発表資料をみると

平成29年4月1日の調査については、改正後の調査要領によりがたい場合、改正前の調査要領によることができる

とのことです。じっさい、待機児童数のめちゃくちゃ多い横浜市・川崎市は旧来の調査方法を踏襲し、待機児童2名・0名というありえない少ない数字を発表しました。

はじめは待機児童数を少なく見せるために新方式を拒否したのかと思いましたが、新方式は多大なる確認作業が必要となるため、確認に割く人員や手続きを用意できていなかった、という可能性も想像できます。

もっとも、これは初回だけのことなので、来年2018年4月の待機児童数は大幅に増えることになるでしょう。

参考資料

都度資料を出しているとみづらくなると考え、以下に参考資料を以下にまとめます。

厚生労働省:保育所等利用待機児童数調査に関する検討会(2016年9月から2017年3月まで開催)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-koyou.html?tid=383018

検討会(第2回…2016年11/29)の資料1 (これまでの定義の記載と、自治体における定義の解釈の具体例を記載)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000144884.pdf

検討会(第2回…2016/11/29)の参考資料1 (自治体における定義の解釈に関するアンケート・意見)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000144885.pdf

神奈川県の待機児童数の報道発表資料(参考資料として、新しい待機児童の定義が記載されている)

http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/880072.pdf

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