この記事では、神奈川県川崎市の中原区が公開した2017年(平成29年)4月の保育所等利用申込・利用調整結果状況(一次利用調整)の倍率を、前年度(2016年4月)のデータと比較するかたちでご紹介します。
かつて保育園激戦区と呼ばれた川崎市。現在の待機児童数は驚異的な少なさを誇るようで、2015年4月度にはついに待機児童ゼロ人を達成しています。でも、保育園探しをした人ならみんなわかってると思いますが、この待機児童ゼロは数字のマジックです。
なので、川崎市の保育園の激戦度合いを知るには、「何人が申し込んで、何人が入園できたか」という競争率を見ていただくのが手っ取り早いと思います。
人気住宅エリアの武蔵小杉を擁する、川崎市最大の都市である中原区の保育園倍率情報を前年度と比較するかたちでご紹介します。
中原区の認可保育園の倍率は11.7倍?
2017年(平成29年)4月入園の川崎市中原区の認可保育施設の一次募集の内定数は全年齢(0歳児から5歳児)の合計で1,371人でした。これは82の施設(保育園・保育ママ・認定こども園など)の合計です。在籍児童の進級はカウントしてません。川崎区や幸区の1.5倍近い規模です。
2017年4月入園児には、16,034名が応募したうち、入園できた子どもは1,371名だったので、競争倍率は11.7倍です。12人に1人しか入れないということです。ただし、この応募人数は、複数の園に希望を出した人の累計数です。1人最大8園に併願できるので、実倍率はもっと低いはずです。とはいえ、全員8園に併願していたとしても、倍率は1.5倍 (=11.7÷8)なので、3人に1人は落選している計算です。8園出さない人も多いはずなので、本当の倍率は2倍近いでしょう。
一人複数の園に応募しているという前提での川崎市中原区の保育園の年齢別の競争率(2017年4月)は以下の通りでした。
- 0歳児…10.6倍(内定421人に申請4458人)
- 1歳児…12.3 倍 (内定623人に申請7687人)
- 2歳児…14.5 倍 (内定180人に申請2609人)
- 3歳児…9.1 倍 (内定113人に申請1028人)
- 4歳児…7.6 倍 (内定23人に申請175人)
- 5歳児…7.0 倍 (内定11人に申請77人)
全体では、申請16,034人に対して内定1371人、倍率は11.7倍です。応募者の多い0−2歳児は、みんな必死に第8希望まで記入すると思うので、実際の倍率は0歳児で1.3倍、1歳児で1.5倍、2歳児で1.8倍くらいでしょうか。絶望的な競争率ですが、待機児童が最悪と言われている東京都世田谷区の2017年4月の競争率が、1.7-1.9倍くらいなので、まだマシかもしれません。
0-1歳クラスに関して言えば、応募数は軒並み川崎市幸区の2倍です。ただし、内定者数は幸区の1.5-1.7倍くらいなので、競争率は幸区や川崎区より激しいです。
最後のほうで述べますが、前年2016年4月時点の情報と比べると、内定者は1割ほど増えたものの、応募者数は3割増えているので、倍率は前年度の9.7倍(これもトンデモナイ数字)から大幅に増加(競争率が激化)しています。
川崎市中原区の保育園の競争率、前年度との比較
倍率のデータというのは、単年で見ても、見える情報は限られてきます。
子育てジャパンでは、昨年度も中原区の保育園の競争率について同様な集計を行いました。次のような結果でした。
2016年4月の川崎市中原区保育園倍率
- 0歳児…9.83 倍 (内定348人に申請3422人)
- 1歳児…10.03 倍 (内定582人に申請5840人)
- 2歳児…10.30 倍 (内定162人に申請1669人)
- 3歳児…7.03 倍 (内定109人に申請766人)
- 4歳児…7.48 倍 (内定27人に申請202人)
- 5歳児…5.48 倍 (内定23人に申請126人)
全体では、申請11,949人に対して内定1,233人、倍率は9.7倍でした。
中原区の保育園の倍率の情報を、昨年度のデータと比較すると、次のようなことがわかりました。
- 内定者数:1,233名→1,371名 (138名増加)
- 応募人数:11,949名→16,034名 (4,085名増加。ただし、延べ人数なので参考値)
- 倍率:9.7倍→11.7倍
内定者数は11% くらい増えたけど、応募者数が34%も増えたので、競争率はひどくなりました。が激しく増えてしまっています。
ちなみに、増加した内定数(前年比138名増加)ですが、そのうちわけは、激戦である0歳児クラスで73名増加、1歳児クラスで41名増加、2歳児クラスでは18名増加です。この程度の内定者数の増加は、増加する保育園ニーズに応えて保育園を新設する、というよりも、1クラスの定員を数名増やす、といった微調整だけで実現した数字に見えます。つまり、子育て世代は増えているけれど、中原区(川崎市)としては、あまり本腰を入れて保育園事情を改善していないのではないかな、と見えてしまいます。
もうすこしすると、川崎市の待機児童数が公表されるでしょう。中原区では、応募しても3人に1人は保育園に入れないくらいの激戦ですが、待機児童の定義を曲解するために、おそらく待機児童数はものすごい少ない数(0人とかヒトケタ)で公開されるのではないかと思います。
お隣横浜市の待機児童の定義に関する考察はこちら。
タワーマンション増設で人が増えているのだから、人々の暮らしに必要な施設にしっかり投資していただきたいところです。
おわりに:この記事のデータについて
この記事のデータは川崎市がPDF形式で公開している中原区の保育園の一次募集の調整後申請数と実際に内定を出した数の一覧表を、当方が手作業で集計して、年齢別の倍率を算出しています。
元データはこちらです。
川崎市中原区の認可保育所等の利用調整結果(PDF)
情報を掲載しているページ
・平成29年4月の保育所等の利用調整に関する申込数及び内定数を掲載します。
・申込数は、利用を希望されている児童の延べ申込人数です。
・内定数は、新規の入所予定数です。
この記事で紹介した倍率は、定員若干名の家庭的保育施設から定員150名の大規模保育園、そして0-2歳向け、1-5歳向けなど、様々な園のデータを一緒くたに集計したものですので、実態とは隔たりがあることをご承知おきください