この記事では、東京都における「実は保育園待機児童数が比較的少ない地域」について2016年(平成28年)に東京都が発表したデータをもとにお届けします。
当ブログ「子育てJAPAN」では、毎年東京都の自治体の待機児童ワーストランキングを公開しています。
とはいえ、このランキングは単純な待機児童数の比較のため、人口が多い地域・子どもが多い地域がどうしても上位に入りがちです。
そのため、子どもの数を考慮した「隠れ激戦区」や「実は待機児童数が少ない地域」も調べるようにしました。例えば昨年度2015年度の情報は…
というわけで、今回は、東京都の市区町村別に、子どもの数を考慮した、待機児童数の少ない地域をご紹介します。
はじめに、東京都の待機児童数はどのくらい?
待機児童数ワーストランキングの記事でも触れておりますが、2016年4月1日時点で、東京都全体には637,329人の未就学児童(小学生未満)の子どもがいました。このうち、261,705人が保育サービスを利用し、8,466人が残念ながら待機児童となってしまいました。
待機児童が一番多いのは世田谷区で、1198人でした。でも世田谷区は同時に未就学児童の数も4万人超と、都内で一番多いです。
単純な比較だと、待機児童が多い地域=子どもが多い地域、となりかねないので、複数の方法で、子どもの数の割に待機児童が少ない自治体を探してみることにします。
待機児童が少ない(1):子どもが多い割に待機児童が少ない
まずは昨年度と同じ集計です。子どもが多い地域どうしを比較して、そのなかでも、比較的待機児童が少ない地域を探してみました。
未就学児童3万人越えで、待機児童200人未満
- 練馬区…166人(ワースト21位)
未就学児童人口が3万人を越えるのは多い順に世田谷区、江戸川区、練馬区、大田区、足立区です。
待機児童200人未満という数字に根拠はありません。就学前児童人口が東京都内で三番目に多い練馬区。かつて待機児童数上位だったのが、このなかで唯一待機児童が200人を切りました。
未就学児童2万人越えで、待機児童200人未満
- 八王子市…139人(ワースト26位)
- 杉並区…136人(ワースト27位)
- 葛飾区…106人(ワースト30位)
続いて2万人台の地域。江東区、板橋区、八王子市、杉並区、葛飾区の5自治体があります。ここに挙げた3つの市区は、待機児童数276人でワースト3位の板橋区と同じくらいの人口でも、待機児童数は半分以下です。
就学前児童1万人越えで、待機児童150人未満
- 港区…64人(ワースト38位)
- 新宿区…58人(ワースト39位)
- 墨田区…134人(ワースト28位)
- 文京区…98人(ワースト33位)
- 豊島区…105人(ワースト31位)
未就学児童数1万人-2万人の地区は、多い順に町田市、品川区、北区、港区、府中市、目黒区、中野区、新宿区、墨田区、調布市、文京区、豊島区、渋谷区です。けっこうあります。
このうち渋谷区、目黒区、府中市などは待機児童数が300人程度でワーストランキング上位です。でも、ここに挙げた5つの区はその半分以下の待機児童数です。
というわけで、東京都には未就学児童人口が1万人を超える自治体が23つ(19区と4市)存在します。そのなかでも9つの自治体は人口の割に比較的待機児童数が少ないといえます。
待機児童が少ない(2):保育園に入れなかった人の割合が小さい
そうはいっても、子どもの数と待機児童数を比較するだけだと、分かりづらい気がします。そこで、今年から割合に注目した新しい分析をしてみることにします。
待機児童の数は多いけれど、保育園の数はめちゃくちゃたくさんあって、相対的に見ると待機児童になった子は少ない、そんな状況もあるんではないでしょうか。
そこで、自治体全体の保育園の合計定員と待機児童の数を比べてみました。
東京都全体で保育園に入れた子どもの数は、261,705人でした。この一方で、待機児童数は8,466人です。つまり、保育園に入りたかった人のうち、3.2%の人(8466÷261702=0.0032)が保育園に入れなかったことになります。
この数字が少ないほど、保育園に入れなかった人の割合が少ないことになるんです。この数字を比べてみました。
保育園に入れなかった人が0%の自治体
次の13の自治体は待機児童ゼロなので、保育園に入れなかった人の割合は0%です。
- 稲城市
- 武蔵村山市
- 千代田区
- 福生市
- 大島町
- 小笠原村
- 新島村
- 神津島村
- 奥多摩町
- 檜原村
- 御蔵島村
- 利島村
- 青ヶ島村
待機児童ワーストランキングの記事にもまとめていますが、基本的に人口が少ないエリアが多いです。保育園に通っている子が100人未満の自治体が7つもあります。
とはいえ、福生市、千代田区、武蔵村山市、稲城市は子どもの数が2000人以上で、そこそこに大きな自治体です。
保育園に入れなかった人が100人に1人未満
本題に入りましょう。次の6つの自治体は、保育サービス定員に対する待機児童比率が1%未満、すなわち保育園に入れなかった人が100人に1人未満でした。
- 羽村市…0.1% (待機児童数1人)
- 東大和市…0.3% (待機児童数7人)
- 日の出町…0.4% (待機児童数2人)
- 昭島市…0.8% (待機児童数21人)
- 青梅市…0.8% (待機児童数25人)
- あきる野市…0.98% (待機児童数18人)
このあたりは、待機児童数もそもそも少ないか、比較的小さい自治体が多いです。とはいえ、昭島市や青梅市は未就学児童人口が5000人を越えているので、そこそこ大きな地域です。比較的保育園に入りやすいということになります。
保育園に入れなかった人が100人に2人未満
もう少し範囲を広げてみましょう。保育サービス定員に対する待機児童比率が1-2%の自治体を洗い出しました。
- 新宿区…1.0% (待機児童数58人)
- 港区…1.0% (待機児童数64人)
- 葛飾区…1.1% (待機児童数106人)
- 八王子市…1.2% (待機児童数139人)
- 練馬区…1.2% (待機児童数166人)
- 杉並区…1.4% (待機児童数136人)
- 八丈町…1.8% (待機児童数4人)
- 大田区…1.8% (待機児童数229人)
- 三宅村…1.9% (待機児童数1人)
八丈町と三宅村はかなり人口が少ないけれど、それ以外には東京23区から6つの区と八王子市が登場します。
大田区に至っては、待機児童229人とワーストランキング15位に入るほどなのだけど、定員が多いため、実は激戦区ではないようです。102人申し込んだら100人は入園できている計算です。
ちなみに、待機児童数が都内最多の世田谷区は、この割合が7.9%です。驚くべきことに、この数字はワースト1位ではなくて、その上に台東区と狛江区がいます。いずれも待機児童数はそこまで多くないのに、保育サービスが少ないようです。
このあたりは「隠れ激戦区」として別の記事で分析します。
まとめ:待機児童数が少ない自治体はどこだった?
以上、東京都の2016年のデータをもとに就学前児童人口や、保育サービス定員との比較で、待機児童が「比較的少ない」地域をご紹介してきました。
この記事で紹介した情報は、東京都福祉保健局が2016年7月に公表した「都内の保育サービスの状況について」というデータをもとに作成しました。
大きな都市に注目すると、練馬区、八王子市、葛飾区、港区、新宿区、墨田区、文京区、豊島区などは、比較的待機児童の数が少ないです。
また、保育サービスの定員と待機児童数を比較すると、練馬区、八王子市、葛飾区、港区、新宿区、あきる野市、青梅市、昭島市、東大和市といった中規模〜大都市は、待機児童ゼロではないけれど、あんまり保育園に落選しないことになります。
とはいえ、この「待機児童」という数字は、自治体によって若干解釈が異なっていることがあります。また、国の定義では、保育園に入れずに育休を延長してしまった人などは待機児童に含めなかったりします。
最後に元も子もない事をいうと、この記事は都が発表した数字を分析しているけれど、そもそも都が発表している数字は現実とは違うので、あんまり信じないでください、という結論です。
待機児童の定義について、詳しくはこちらの記事でどうぞ。
おまけ:豆知識
- 荒川区は、東京23区で唯一、未就学児童人口の半分以上の保育園定員がある。2人に1人は保育園児
- 江戸川区と世田谷区は、子どもの数に対してそこまで保育園定員は多くない。3人に1人が保育園児