この記事では、2017年(平成29年)4月時点の横浜市の保育所等利用待機児童数について区ごとのワーストランキング形式でご紹介しています。待機児童数は前年7人からさらに減って、市全体でたった2名だったとのことです。
※はじめにお断りしておくと、この記事は横浜市が発表している「待機児童数」に基づくランキングで、どの区の保育園が入りづらいといった参考には一切なりません。区ごとの違いを見たい方は、次の「保留児童」ランキングをご覧ください。
神奈川県横浜市が「平成29年4月1日現在の保育所等利用待機児童数について」という資料を公開していました。
300万人都市である横浜市。共働き家庭も多く、保育園はさぞ激戦かと思いきや、「認可保育所や小規模保育事業等の多様な保育施設の整備・拡充や、きめ細かい相談支援サービスなどに取り組んだ結果(横浜市の発表資料より)」前年の7人からなんと7割も削減して、たった2人となりました。
並べるまでもないけれど、18つある横浜市内の区別にランキングにしてみましょう。
横浜市の区別待機児童数ワーストランキング(2017)
横浜市待機児童数ワースト1位:港北区 (2名)
横浜市待機児童数ワースト2位(タイ)
- 鶴見区
- 戸塚区
- 青葉区
- 神奈川区
- 都筑区
- 港南区
- 旭区
- 保土ケ谷区
- 緑区
- 金沢区
- 泉区
- 南区
- 磯子区
- 中区
- 瀬谷区
- 栄区
- 西区
2位は保育園の定員数が多い順に並べました。
というわけで、一番保育園の待機児童が多いのは前年比ゼロのままの港北区で、前年度ワースト1位だった鶴見区は待機児童0人を達成しました。
参考までに前年度のランキングもご覧ください。
横浜市の待機児童数が劇的に少ない理由
さて、ここからは、この待機児童ランキングの存在意義を全否定します。
横浜市には約18万人の未就学児童がいます。このうち、2017年4月に保育園入園を希望した人は過去最大の65,144人です。待機児童2名ということは65,142人が入園できたかというと、そうではなくて、実際に入園できたのは61,885人です。つまり、3,259人の子どもが溢れています。
横浜市(神奈川県)では、この3,259人を「待機児童」とは呼ばず、「保留児童」と呼んでいます。
そして、ここから以下の該当者を除外した人数を「待機児童」とみなしています。
- 横浜保育室等(市が独自に制定した認可外保育施設)の利用者
- 育休関係 (新年度4月1日になってもまだ育休を取っている人)
- 求職活動を休止している方(在宅で保育しながら求職している人)
- 特定保育所等のみの申込者など(1箇所しか申し込まなかったり、第1希望でないから辞退した人など)
1が約900人、2と3あわせて700人弱、4が1,600人くらいいます。
こうした人たちを差っぴいた数が「待機児童2名」なのです。
1は「認可じゃないけど別の保育園に入れた」ので確かに「待機」していないと思います。4はいわば「入りたいところに入れなかったから待機しない」という本人都合にも見えるので、確かに「待機」ではないかもしれません。(とはいえ、家から遠く離れた保育園しか入園できても、毎日通わせるのはあまり現実的ではないので、選ぶ権利があって当然だとは思います)
一番問題になるのが2と3です。育休や求職というのは「子どもが保育園に入れたので復職・就職します」という人がほとんどだと思います。なのに「子どもが保育園に入れなかったので育休延長や就職時期延期になりました」という状況の人にたいして「家で子どもの面倒をみればいいから待機児童とは認めないよ」と言っていることになります。
待機児童の定義を統一する運動?
ここで挙げた問題点は、兼ねてから当事者間では問題視されていました。自治体によって待機児童の定義が違ったり、実際より少なくカウントされたりしていたのです。
そこで、2017年4月から厚生労働省が新しい待機児童の定義を導入しました。
正式な定義の通達文書をどうしても見つけられていないのだけど、神奈川県の2017年4月時点の待機児童数の公開資料に抜粋されていたので、そこで確認できます。
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/880072.pdf
(最後の2ページが厚生労働省から提供された「待機児童」の定義)
2017年度4月から導入された大きな変更点としては育休・求職中の人の取り扱いがあります。
- 保護者が求職活動中の場合については、待機児童数に含めること。
- 育児休業中の保護者については、保育所等に入所できたときに復職することを、保育所入所保留通知書発出後や調査日時点などにおいて継続的に確認し、復職に関する確認ができる場合には、待機児童数に含めること。
これまで「4月に育休を終えて復帰するつもりだったのに、保育園に入れなくて、やむを得ず育休延長をした」という人や「4月入園をあてにして就職するつもりだったけど、落選したので就職を先送りにする」という人は待機児童に数えてもらえなかったのだけど、保育園を前提に仕事をしている人たちなのだから、ちゃんと待機児童に数えよう、ということです。
つまり、今回の横浜市の場合だと、待機児童数は2名だけでなくて、育休・求職活動を継続せざるをえなくなった700名くらいの人をカウントしないといけなくなります。
ただ、この定義変更には結構問題点もあって、自治体の担当者が該当する親たちに1人ずつ「復職意思あるんですよね?」という確認をメールや電話でしないといけないようです。
それもあってか、待機児童の調査要綱には、全ての内容を骨抜きにする「改正後の調査要領によりがたい項目がある場合には、改正前の調査要領に基づくことができる」という文言が添えられているようです。つまり、これまで通りの待機児童の数え方でもOKということです。
3月31日に定義変更を申し渡され、5月までにすべての対象家族に電話をして…というマンパワー的に大変な作業をきらったか、あるいは待機児童数を少なく発表したい誰かの思惑があったのかはわかりませんが、横浜市は全て前年通りの数え方をしました。なので待機児童数は2名という驚異的な少ない人数になったのです。