この記事では、東京都における「実は保育園待機児童数が比較的少ない地域」について2017年(平成29年)に東京都が発表したデータをもとにお届けします。
当ブログ「子育てJAPAN」では、毎年東京都の自治体の待機児童ワーストランキングを公開しています。
とはいえ、このランキングは単純な待機児童数の比較のため、人口が多い地域・子どもが多い地域がどうしても上位に入りがちです。
そのため、子どもの数を考慮した「隠れ激戦区」や「実は待機児童数が少ない地域」も調べるようにしました。例えば昨年度2016年度の情報は…
というわけで、今回は、東京都の市区町村別に、子どもの数を考慮した、待機児童数の少ない地域をご紹介します。
はじめに、東京都の待機児童数はどのくらい?
2017年度の東京都の待機児童数は、全62市区町村の合計で8,586人でした。前年度にくらべて120人増えました。待機児童の定義が見直されたものの、従来定義を使い続けている自治体もあって、実態になかなか迫っていない数字に思います。
(なお、前々年度の2015年からは700人以上増えています)
保育園(認可保育園、認証保育園、認証こども園)に入っている子どもの数は前年度から1万6千人も増えた277,708人でした。
待機児童が一番多かったのは、言うまでもなく世田谷区で、861人でした。これでも前年からかなり減らしました。世田谷区は都内で一番未就学児童が多いので、必然的に待機児童が多くなります。
単純な比較だと、待機児童が多い地域=子どもが多い地域、となりかねなくて、世田谷のような子どもが多い自治体がどうしても上位になりがちです。ここでは複数の方法で、子どもの数の割に待機児童が少ない自治体を探してみることにします。
待機児童が少ない(1):子どもが多い割に待機児童が少ない
毎年同じ集計です。子どもが多い地域どうしを比較して、そのなかでも、比較的待機児童が少ない地域を探してみました。
未就学児童3万人越えで、待機児童200人未満
- 練馬区…48人(ワースト37位)
未就学児童人口が3万人を越えるのは多い順に世田谷区、練馬区、江戸川区、大田区、足立区です。去年は練馬が3位だったけど、僅差で練馬が2位になりました。
待機児童200人未満という数字に根拠はありません。就学前児童人口が東京都内で三番目に多い練馬区。かつて待機児童数上位だったのが、このなかで唯一待機児童が200人を切りました。ただ、この数字は少なめに数えているようで、あまり信頼できません。
未就学児童2万人越えで、待機児童200人未満
- 八王子市…107人(ワースト25位)
- 葛飾区…76人(ワースト34位)
- 杉並区…29人(ワースト39位)
続いて2万人台の地域。江東区、板橋区、杉並区、八王子市、葛飾区の5自治体があります。この人数ノ自治体だと、江東区が待機児童数ワースト9位、板橋区がワースト14位でした。それ以外が比較的待機児童数が少ない地域で、待機児童数が多少減って、顔ぶれは同じでした。
就学前児童1万人越えで、待機児童150人未満
- 豊島区…0人(ワースト47位)
- 新宿区…27人(ワースト40位)
- 北区…82人(ワースト33位)
- 文京区…102人(ワースト26位)
- 墨田区…148人(ワースト21位)
未就学児童数1万人-2万人の地区は、多い順に、品川区、町田市、港区、北区、府中市、中野区、目黒区、新宿区、墨田区、調布市、文京区、豊島区、渋谷区、荒川区です。けっこうあります。
このうち渋谷区、目黒区、府中市、中野区、調布市は待機児童数が300人を超えていて、待機児童ワーストランキング10位内です。渋谷区も2年連続で300人近い待機児童数です。また、港区は前年から100人ほど増やしてしまいました。
というわけで、東京都には未就学児童人口が1万人を超える自治体が24こ(20区と4市)存在します。そのなかでもここまで上げてきた9つの自治体(練馬、八王子、葛飾、杉並、豊島、新宿、北、文京、墨田)は人口の割に比較的待機児童数が少ないといえます。
待機児童が少ない(2):保育園に入れなかった人の割合が小さい
そうはいっても、子どもの数と待機児童数を比較するだけだと、分かりづらい気がします。そこで、昨年から割合に注目した新しい分析をはじめています。
待機児童の数は多いけれど、保育園の数はめちゃくちゃたくさんあって、相対的に見ると待機児童になった子は少ない、そんな状況もあるはずです。
そこで、自治体全体の保育園の合計定員と待機児童の数を比べてみました。
東京都全体で保育園に入れた子どもの数は、277,708人でした。この一方で、待機児童数は8,586人です。つまり、保育園に入りたかった人のうち、3.1%の人(8586÷277708=0.0031)が保育園に入れなかったことになります。
この数字が少ないほど、保育園に入れなかった人の割合が少ないことになるんです。1031人が保育園に希望を出したけど、1000人が入れて31人が待機児童になったというイメージです。(「希望したけど入れなかったので諦めた」という人は数えてません)
前年度はこの数値が3.2%だったけれど、待機児童数が減って、保育園利用者が増えたのでわずかに減りましたね。この数字を全自治体で比べてみました。
保育園に入れなかった人が0%の自治体
次の16の自治体は待機児童ゼロなので、保育園に入れなかった人の割合は0%です。
- 豊島区
- 千代田区
- 羽村市
- 福生市
- 日の出町
- 大島町
- 八丈町
- 奥多摩町
- 新島村
- 神津島村
- 小笠原村
- 三宅村
- 檜原村
- 御蔵島村
- 利島村
- 青ヶ島村
保育園利用者の多い順です。待機児童ワーストランキングの記事にもまとめていますが、基本的に人口が少ないエリアが多いです。保育園に通っている子が100人未満の自治体が8つもあります。
とはいえ豊島区は5,000人以上、千代田区・羽村市・福生市は1,500人くらいが保育園を利用しているそこそこ大きな自治体です。
101人いたら100人は保育園に入れた自治体
本題に入りましょう。次の6つの自治体は、保育サービス定員に対する待機児童比率が1%未満、すなわち保育園に101人応募して、待機児童が1人未満しか発生していませんでした。
- 東大和市…0.1% (待機児童数3人)
- 杉並区…0.3% (待機児童数29人)
- 練馬区…0.3% (待機児童数48人)
- 青梅市…0.4% (待機児童数12人)
- 新宿区…0.4% (待機児童数27人)
- 昭島市…0.6% (待機児童数17人)
- 武蔵村山市…0.6% (待機児童数12人)
- あきる野市…0.7% (待機児童数12人)
- 葛飾区…0.7% (待機児童数34人)
- 八王子市…0.9% (待機児童数25人)
東大和市、武蔵村山市、あきる野市は保育園利用者が2000人前後の小さな自治体です。でも、杉並・練馬・葛飾・八王子とその5倍以上の規模の自治体も同じくらいの保育園の入りやすさということです。(あくまで数字の上では)
102人いたら100人は保育園に入れた自治体
もう少し範囲を広げてみましょう。保育サービス定員に対する待機児童比率が1-2%の自治体を洗い出しました。昨年度は9つの自治体があったのだけど、今年は2つだけでした。
- 北区…1.1% (待機児童数82人)
- 板橋区…1.9% (待機児童数231人)
去年は待機児童数ワースト15位の大田区が1.8%と、ここに登場していて、実は激戦ではなかったことになっていました。でも大田区は2017年度は待機児童数がワースト3位、かつ入園に対する待機児童比率が4.3%となって名実ともに激戦区に成り下がってしまったようです。
ちなみに、待機児童数が都内最多の世田谷区は、この数値が5.2%です。平均(3.1%)よりは上なのだけど、これより悪い数字の自治体はなんと12個もあります。一番ひどいのは目黒区で12.8%、113人いたら13人が保育園待機児童になっているというひどさです。その次に悪い三鷹市・中央区がいずれも7.5%なので突出したひどさです。
このあたりは「隠れ激戦区」として別の記事で分析します。
まとめ:待機児童数が少ない自治体はどこだった?
以上、東京都の2017年のデータをもとに就学前児童人口や、保育サービス定員との比較で、待機児童が「比較的少ない」地域をご紹介してきました。
大きな都市に注目すると、練馬区、八王子市、葛飾区、杉並区、豊島区、新宿区、北区、文京区、墨田区などは、(子どもの数の割に)比較的待機児童の数が少ないです。
また、保育サービスの定員と待機児童数を比較すると、上記に加え、東村山市、青梅市、昭島市、武蔵村山市、あきる野市、板橋区などはあんまり保育園に落選しないことになります。
とはいえ、この「待機児童」という数字は、自治体によって若干解釈が異なっていることがあります。2017年から統一する動きがあるものの、2017年度は移行期ということで数え方が自治体によってバラバラでした。というわけで、毎年書いていますが、この記事は都が発表した数字を分析しているけれど、そもそも都が発表している数字は現実とは違うので、あんまり信じないでください。リアルな実態はお住まいの地域の役所(保育課など)に聞いてくださいね。
待機児童の定義について、詳しくはこちらの記事でどうぞ。
この記事で紹介した情報は、東京都福祉保健局が2017年7月に公表した「都内の保育サービスの状況について」というデータをもとに作成しました。