神奈川県の待機児童ランキング(2017年/平成29年度版)

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この記事では、神奈川県の待機児童ワーストランキングとして、神奈川県が公開している2017年度(平成29年度)4月時点の保育園待機児童数を、市町村別に、多い順にご紹介しています。

関東では東京都に次いで人口の多い神奈川県の待機児童のランキングの最新版(2017年4月分)を作成しました。

神奈川県といえば、政令指定都市である横浜市と川崎市がある県です。当ブログで再度指摘しているとおり、保育園の超激戦区なのに、強引な解釈で待機児童数を少なく見せている地域です。報道などでだいぶ知られてきたこともあり、今年から集計方法を変更したり、実態に近い待機児童数(保留児童数)もあわせて公開するようになったりと、色々と工夫がみられる神奈川県の待機児童ランキングを、注釈とあわせてご紹介します。

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はじめに:神奈川県の待機児童の概況

神奈川県は、2017年5月31日に、2017年4月時点の県内の待機児童に関する状況を発表しました。

報道発表資料「保育所等利用待機児童数の状況について」

詳しいデータ・分析はこちらのPDFファイルに掲載されています。

http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/880072.pdf

神奈川県では、2017年度4月には154,629人が保育所利用を希望して、145,198人が保育園や認定こども園に入園しました。

ちなみに神奈川県全体の未就学時児童数が44万人程度なので、だいたい33%の子どもが保育園に入っていることになります。

希望者より入園できた子どもの数に差があることからもわかるように、待機児童は発生しています。ただ、神奈川県では保育園に入園できなかった9,431人を「保留児童」とと集計し、そこからいくつかの条件に該当する子どもの数を除外して、2017年4月時点の待機児童数を756人と発表しました。前年度と比べて259人の増加です。7年ぶりの増加なのだけど、これには待機児童のカウント方法を変更したことが関係あるようです。

これまでのカウント方法では、保留児童から、「育休継続(保育園に入れられるまで復職できない)」「求職継続(保育園入れられるまで就職できない)」「特定の園を希望する」人などを除外した人を「待機児童」と呼ぶようにしているのです。

ただ、育休を継続するとか恣意的な判断が入るので、厚生労働省が2017年度から数え方を見直しましょう、と提唱しました。ただ、移行期間ということで旧来の少なく見せる数え方を採用した地域も少なくありません。ただ、神奈川県は今年から全市町村の「保留児童数」も併せて公開するようになったので、より生々しいデータが明るみにでています。

なお、待機児童のカウント方法については当ブログの記事も参考にしてください。(これまでのカウント方法の紹介です)

保育園「待機児童」の正確な定義とは?厚生労働省の定義を読み解く
この記事では、厚生労働省が毎年実施している「保育所入所待機児童数調査」における、保育園の「待機児童」という用語の国の定義についてご紹介します。育休や求職といった重要そうな人々を除外するという定義になっ...

神奈川県の待機児童数ワーストランキング2017年(平成29年)度版

新しい(より実態に近い)待機児童の数え方が採用されたものの、2017年は移行措置として、旧来の集計方法でカウントしても良いようです。そのため、神奈川県では一番保育園問題が深刻な横浜市・川崎市が旧方式でカウントしてきました。若干実態と異なるランキングになっている気もするけれど、市町村別の待機児童数ワーストランキングをご紹介します。旧来の(少なく見える)数え方を継続している自治体には注釈をつけています。

なお、前年度(2016年度)のワースト10は、1位茅ヶ崎市を筆頭に、藤沢市、伊勢原市、鎌倉市、綾瀬市、座間市、海老名市、小田原市、横須賀市、逗子市の順でした。

神奈川県の待機児童ランキング(2016年/平成28年度版)
この記事では、神奈川県の待機児童ワーストランキングとして、神奈川県が公開している2016年度(平成28年度)4月時点の保育園待機児童数を、市町村別に、多い順にご紹介しています。 大都市横浜を擁す...

神奈川県待機児童数ワースト1位〜10位

1位:藤沢市 …148人
2位:座間市 …79人
3位:伊勢原市 …58人
3位:海老名市 …58人
5位:秦野市 …49人
6位:厚木市 …48人
7位:鎌倉市 …47人 (一部旧方式集計)
7位:綾瀬市 …47人
7位:葉山町 …47人 (旧方式集計)
10位:平塚市 …32人 (一部旧方式集計)

前年ワースト1位の茅ヶ崎市は集計方法を変えずにワースト13位へ後退(前進?)し、前年2位の藤沢市が2017年度に神奈川県で一番待機児童が多い都市(仮)の汚名を得ることになりました。

秦野市は前年0名だったのが、集計方法を変更したことで一気にワースト10に入ってしまいました。このほか、海老名、秦野、厚木が集計方法変更により軒並み順位・待機児童数を増やしています。平塚(前年0人)や鎌倉も、集計方式の変更で待機児童を増やしたようです。

葉山町は不思議なことに旧来の集計方式のまま待機児童数を大幅に増やしてしまっています。

神奈川県待機児童数ワースト11位〜20位

11位:逗子市 …26人
12位:小田原市 …24人 (一部旧方式集計)
13位:茅ヶ崎市 …18人 (一部旧方式集計)
13位:大磯町 …18人
15位:愛川町 …16人
16位:横須賀市 …12人 (旧方式集計)
17位:寒川町 …11人
18位:南足柄市 …9人
19位:二宮町 …5人 (旧方式集計)
20位:横浜市 …2人 (一部旧方式集計)
20位:大井町 …2人

前年度ワースト1位の茅ヶ崎市は、前年度から71人も待機児童を減らしてきました。ただ、集計方式が古いままなので、実態はちょっとわかりません。

横浜市が2人しか待機児童がいないというのはさすがに嘘で、3000人を超える保留児童が発生しています。なお、県の発表資料では「一部旧方式で集計」となっていて、横浜市内のいくつかの区では新方式で集計したようにみえますが、横浜市の発表資料をみると、「全部の区が旧方式で集計した」と明記されてました。ここで小さな見栄をはらないでほしいものです。

神奈川待機児童数ワースト22位(待機児童数ゼロ)

22位:川崎市 …0人 (一部旧方式集計)
22位:相模原市 …0人 (一部旧方式集計)
22位:三浦市 …0人
22位:大和市 …0人
22位:中井町 …0人
22位:松田町 …0人
22位:山北町 …0人
22位:開成町 …0人
22位:箱根町 …0人
22位:真鶴町 …0人
22位:湯河原町 …0人
22位:清川村 …0人

12の自治体で待機児童がゼロでした。町・村などの人口の少ない地域は、子どもが増えないので既存の保育園で十分間に合うなどして、待機児童問題が発生しずらい傾向にあります。

ただ、さすがに川崎市の待機児童数ゼロは誇大広告もいいところです。

川崎市(とくに武蔵小杉エリア)には保育園利用希望者がどんどん増えているのに保育園定員数の増加は横ばいで、明らかに保育園が足りていません。

参考記事:2017年4月の川崎市中原区の保育園の応募状況

川崎市中原区の保育園一次倍率(2017年/平成29年度版)
この記事では、神奈川県川崎市の中原区が公開した2017年(平成29年)4月の保育所等利用申込・利用調整結果状況(一次利用調整)の倍率を、前年度(2016年4月)のデータと比較するかたちでご紹介します。...

これについては、別途「保留児童数ランキング」を作成しますので、そちらで実態に近い数字をご覧ください。

政府が本腰を入れて待機児童対策をするために、まずは待機児童を「見える化」すべく、定義を見直したと考えています。にもかかわらず、本当に可視化が必要な大都市は古い定義で待機児童少なくカウントしてしまっているので、待機児童対策は先が思いやられるな、と感じました。

次の記事では、神奈川県のもっとリアルな待機児童数である「保留児童数」のワーストランキングをご紹介しているので、あわせてご覧ください。

実質上の待機児童、神奈川県の保留児童ランキング(2017年/平成29年度)
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